こんにちは。つるけら(@tsurubloger)です。
今回は堀井拓馬氏の『なまづま』を紹介します。
粘膜にまみれた狂気の愛、とくとご覧あれ……。
- ホラー小説が好き
- 狂った人物がみたい
著者 堀井拓馬氏について
堀井拓馬氏は日本の作家で、主にホラー作品を執筆されています。
本記事で紹介する『なまづま』で「第18回日本ホラー小説大賞」の長編賞を受賞し、同作でデビューされました。
また同作は「第3回AXNミステリー 闘うベストテン」においても第5位に選ばれました。
他作品は『夜波の鳴く夏』『臨界シンドローム 不条心理カウンセラー・雪丸十門診療奇談』などがあげられます。
ちなみに個性的な絵を描かれるお子様がいるようで、よくTwitterであげられてます。
泣いてるような笑っているような味のある作品です。やはり感性は遺伝するのでしょうか。
『なまづま』商品情報
タイトル | なまづま |
著者 | 堀井 拓馬 |
出版社 | 角川書店 |
本体価格 | 580円 |
『なまづま』あらすじ
激臭を放つ粘液に覆われた醜悪な生物ヌメリヒトモドキ。日本中に蔓延するその生物を研究している私は、それが人間の記憶や感情を習得する能力を持つことを知る。他人とうまく関われない私にとって、世界とつながる唯一の窓口は死んだ妻だった。私は最愛の妻を蘇らせるため、ヌメリヒトモドキの密かな飼育に熱中していく。悲劇的な結末に向かって……。
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書評
以下『なまづま』の書評です。
ヌメリヒトモドキの気味悪さがよく伝わる
本作で一番重要なのが「ヌメリヒトモドキ」という架空の生物の存在です。
大きなナメクジのような見た目をしており、
- つねに激臭を放っている
- 絶え間なく粘液が垂れ流す
- 人の毛や爪、残飯に群がる
など、かなり醜い生物だと描写されています。
人々から忌み嫌われており、発見され次第「モドキタタキ」という専用の棒で殴りつけられます。
主人公がヌメリヒトモドキと浴室に入るシーンは、臭いや粘液の様子が詳しく書かれていて、思わず息苦しくなってしまいました。
また進化して人間に近付いたヌメリヒトモドキは、人の形をして流暢に話しつつも臭いと粘液は常に発している、かなり不気味な存在です。(おそらく表紙に描かれているのが進化したヌメリヒトモドキ)
このように、ヌメリヒトモドキの気味悪さが読者に大きなインパクトを与えます。
加速していく主人公の狂気
あきらめなければ成る、何事も、狂気と愛があれば。
引用元:角川書店『ヌメリヒトモドキ』
本作主人公はヌメリヒトモドキの研究所に勤める研究員です。
受け身な性格で自分からなにかをすることはありませんが、自身とは正反対で活発な性格である妻のおかげで人生を楽しむことができ、妻のことを心から愛していました。
そんな最愛の妻を亡くして以降、無気力な生活を送るようになります。
主人公が狂いだしたのはヌメリヒトモドキの特異な性質を知ってから。
ヌメリヒトモドキは同じ人物の遺伝子(紙や爪)を与え続けると、その人物そっくりの姿かつ精神までもが同じものに進化するのです。
これを利用し妻の蘇生を試みる主人公。ある程度妻の姿に近づいてからの狂いっぷりはすさまじいです。
ヌメリヒトモドキと分かっていながらも、妻の形をする「それ」を愛する主人公。
人々から忌み嫌われているヌメリヒトモドキと抱き合い、あげくにキスまでする始末です。
体には臭いが染みつき研究所で指摘されますが、後半はそれもかまわない様子。
愛する者のためと言いつつ、ほとんど自己満足な行動をとる主人公に狂気を感じました。
人間のほうが醜い?
本作ではヌメリヒトモドキの醜さについて多く書かれています。
しかし、わたしはむしろ作中の人間にこそ醜さを感じました。
まずはヌメリヒトモドキを虐待する一部の人間の存在。
不死身なのをいいことに、ストレス解消をおこなっているようです。
ヌメリヒトモドキの研究施設ではかなり非道な実験をおこなわれており、一部の研究員はこれを楽しんでいる様子。
これを見て、醜いのは人間じゃないのかと思えてきます。
ヌメリヒトモドキは見た目こそ醜いですが、基本的には生物に危害を加えません。
ただし作中では数人がヌメリヒトモドキによって殺されています。
理由は進化する中で人間並みの知能を持ったから。知能がなければ殺害の選択は取らなかったでしょう。
人間に近付くほど醜くなってしまうのだと感じました。
まとめ
堀井拓馬氏の『なまづま』いかがでしたか?
ヌメリヒトモドキの気味悪さ、主人公の狂気、ジメっとして陰鬱なホラー小説でした。
デビュー作でこれはすごい……。
結末がかなり恐ろしいため、ぜひ楽しみにして読んでください!
それではノシ
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