こんにちは。つるけら(@tsurubloger)です。
今回は品田遊氏の『名称未設定ファイル』を紹介します。
全17話の短編集。皮肉たっぷりのブラックな作品が揃っていています。
- ダ・ヴィンチ・恐山氏のファン
- ブラックユーモアが好き
著者 品田遊氏について
著者の品田遊氏は、普段はダ・ヴィンチ・恐山という名義で活動されているwebライターです。
主な活動はオモコロでの執筆や動画出演。毎週木曜日にはYouTubeにて「匿名ラジオ」を配信されてます。
つねにマスクをつけている謎多き人物で、偏った知識と発想にいつもビックリされます。
詳しくはこちらの動画にて!
代表的な著書として『止まりだしたら走らない』『ただしい人類滅亡計画』などがあります。
『名称未設定ファイル』商品情報
タイトル | 名称未設定ファイル |
著者 | 品田 遊 |
出版社 | 朝日新聞出版 |
本体価格 | 800円 |
『名称未設定ファイル』のあらすじ
SNS、クラウドソーシング、人工知能、フェイク・ニュース、管理・監視社会、電脳世界――
amazon.co.jp
現実のリアルな事象をモチーフにした話から、近未来、超未来を舞台にした物語まで、
SF、ブラックジョーク、パスティーシュなど様々なジャンルを横断する短篇集。
印象に残った5つの話をピックアップ
『名称未設定ファイル』にある全17話のうち、印象に残った以下の5話をピックアップします。
- 猫を持ち上げるな
- 天才小説家・北美山修介の秘密
- 亀ヶ谷典久の動向を見守るスレPart2836
- GIF FILE
- 最後の一日
猫を持ち上げるな
何気なく呟かれた「飼い猫を持ち上げるとすごく伸びる」というツイートに反響があり大きくバズる。しかし一部からは「動物虐待ではないか?」という声が上がる。
次第に声が大きくなっていき大炎上。あげくペットを飼うこと自体がどうなのかという論争まで発展していき……。
何気ないツイートから燃え上がることってありますよね。
当事者そっちのけで論争がはじまり、収まってきたと思いきや著名人が声をあげて油を差すことになったり。
話題にすぐ噛みつく人のしょうもなさがよく表されてました。
ネットに書き込むときは気を付けたいものです。
天才小説家・北美山修介の秘密
恋愛小説を書く天才・北美山修介に憧れる主人公の女の子。
ある日、彼へファンレターと自身の創作小説を送ることに。すると北美山本人からぜひ会いたいというメールが届く。
わくわくと不安を抱えながら北山に会いにいった主人公に待ち受ける、驚きの秘密とは……。
小説家は表舞台に出てくることが少なく、かなりミステリアスな存在です。
公表さえしなければ顔も本名も性別もある程度隠せます。
「え!?あの作家女性(男性)だったの!」って驚いたことありませんか?
思えば好きな作家の作品はよく知っていても、その人自身のことはほとんど知りません。
実はとんでもない秘密があるのかも……。
亀ヶ谷典久の動向を見守るスレPart2836
「亀ヶ谷典久」という人物について、スレの住人がひたすら観察して書き込んでいく。ただそれだけの話。
亀ヶ谷の行動が逐一実況されているので、おそらく彼の身の回りにスレ住人が何人もいるのでしょう。
彼は有名人でも何でもない一般人ですが、異常なPart数から考えると相当なことをやらかしたのでしょうか。
具体的には語られていませんが、人間性に何かしらの問題がありそうです。
ただスレ住人のほとんどは彼から何かされて訳ではなく、なんとなく面白がって書き込んでる第三者なのでしょう。
途中、スレに迷い込んだ人からこのスレの異常さを指摘しますが、日常茶飯事のごとくスルーされます。
「みんなでやれば怖くない」も矛先によってここまで怖くて気持ち悪くなるのかと感じました。
一番怖いのはリアルの5chでも似たようなこと起こってることなんですけど。
GIF FILE
登場人物は3.7秒のGIFファイルに映っている少年と少女。
あるとき何らかの奇跡が起こり、彼らは自身がGIFファイルの住人だということに気が付きます。
繰り返される世界から何とか抜け出そうとするが……。
いわゆる「無限ループって怖くね?」ってやつです。
GIFファイルの人物に自我があるとは考えたこともありませんでした。
考えてみると、彼らは同じ行動を何千何万と繰り返しているのですね。
わたしたちが知らないだけで、実はGIFファイルから出たいと思っているのかも。
もう面白系のGIFで笑えない……。
最後の一日
死亡事故のニュース記事から始まる衝撃の話。
主人公はソシャゲにハマっている普通の大学生。
今日はちょっとだけ嫌なことが重なった、それだけのいたって平凡な展開です。
話自体はホント普通の日常ものですが、つねに冒頭の死亡記事が頭にチラつきます。
その日、自分が死ぬとは思っていない人の一日ってこんなもんだよな……って感想です。
だからこそリアリティがあって怖く感じました。
ただタイトルが「最後」なのが気になる。死ぬなら「最期」ですよね?
総評
全体的に皮肉たっぷりブラックな内容で、大変わたし好みの作品でした。
さすが恐山さん!と思える作品です。
構成としては1話ごとの文章量が短く、かなり読みやすかったです。
彼の活動のなかで時折見せる思想の強さや、斜に構えた視点が存分に発揮されており、ファンにはたまらない作品でしょう。
それではノシ
コメント